
越前生漉奉書(えちぜんきずきぼうしょ)・柾判
1500年続くと語られる原点的技法で漉かれた、国指定重要無形文化財の和紙です。

国指定重要無形文化財保持者(俗に言うところの人間国宝)の、

↑九代目・岩野市兵衛(いわのいちべえ)氏。意外なほど肩の力の抜けた愛嬌のある御仁ですが、紙に向かう時は、周囲を寄せ付けない雰囲気が漂います。(2004年撮影)
今でも機械や薬品を必要最小限度しか使わず、古来の紙の漉き方を粛々と守り続けている、市兵衛氏の作業現場、工程をご紹介します。
1・煮熟(しゃじゅく)

↑国内産の楮を五右衛門風呂みたいなお釜で煮ます。
2・ちり取り

↑煮ることで柔らかくなった楮の繊維に付いている、細かな傷やゴミを手作業で丁寧に取り除きます。夏の暑い日も冬の寒い日も、大半の時間をこの態勢で過ごします。とっても地道な作業です。
3・叩解(こうかい)

↑チリを取り終わった楮を樫の棒を使い独特のリズムで叩き、繊維をすりつぶしていきます。
4・紙出し

↑叩解した繊維を綺麗な湧き水の中でぐるぐるかき混ぜでんぷん質や不純物を取り除きます。バレーボールぐらいの繊維の塊一つにつき小一時間かけて、じっくりかき混ぜます。地道な仕事です。
5・紙漉き

↑長時間を費やして準備した原料を使い紙漉き開始。「桁」(木の枠)は縦方向にのみ揺り動かします。

↑漉き上がったばかりのまだ濡れた状態の紙を一枚ずつ重ねて出来た紙床(しと)。原料の準備や乾燥、検品などに多くの時間をとられるため、一週間のうち紙を漉くのは1日〜2日だけです。
6・圧搾

↑紙床(しと)の水分をテコの原理でギュ〜ッと絞り出します。
7・板張り

↑刷毛を使って、水分が抜けた紙を丁寧かつ機敏に一枚ずつ銀杏の木の板に貼りつけていきます。
8・乾燥

↑室(むろ)と呼ばれるサウナみたいなとこに入れて40〜50℃ぐらいでゆっくりと乾かします。
9・検品

↑市兵衛氏みずからが一枚ずつ検品して、やっと完成します。
越前生漉奉書は300回の重ね刷りに耐えるとうたわれるほどの丈夫さを誇っており、先代の八代目・市兵衛氏の漉いた奉書は、広く内外の版画家から支持され、あのパブロ・ピカソも版画用紙として愛用していたそうです。
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・仕様
色・楮色(白とベージュとクリーム色が合わさったような優しい色合いです)
数量・1枚
寸法・約550mm×約440mm(紙の周囲がモワモワした漉きっぱなしの状態で出荷します)
紙の厚さ・約18/100mm〜21/100m(一枚一枚厚みが微妙に異なります)