おしらせ

2020/09/30 14:13


京もの認定工芸師 創る和紙職人

ハタノ ワタル さん

住所 : 京都府綾部市篠田町下岡21

HP : 創る和紙職人ハタノワタル。
Youtube :→黒谷和紙 : 創る和紙職人 ハタノワタル さん

美術大学を卒業した経験を生かして、店舗や家屋の内装用の手漉き和紙を施工まで一貫して請け負っているハタノさん。今までに何度も展覧会を開催し、エンドユーザーと積極的に交流している職人さんです。

2010年9月15日にハタノさんの仕事場にお邪魔して、和紙を漉いて生活されているその様子についてざっくばらんにお話しを伺った記事の再掲載、その1です。

やっぱり僕ら若手がちゃんとしないと(笑)

タキペ
ハタノさんはこちらのお生まれなんですか?
ハタノ淡路島なんですよ。
タキペ
淡路島!? ご縁があってこちらに。
ハタノそうですね。黒谷和紙が好きで。
タキペ
何かのきっかけでここに来たときに「これだ!」みたいに。
ハタノその前に紙を使うとったんですよ。東京に小津和紙さんってあるじゃないですか。あそこで日本で一番強い紙をくれって言ったら。
タキペ
元々は画家でいらっしゃるんですよね。
ハタノそうそう、美大生。それで黒谷和紙と出合って、それを持って絵を描いていたのですけれど、それから紙漉きに転向したと。
話は変わりますけど、越前の人が全国の紙屋さんを紹介するというのは面白いですよね。
タキペ
そうですか。
ハタノよその地域の宣伝みたいなことって、ほぼ言わないじゃないですか?特に年配の方々とかは。僕らの年代の人達はそれなりに地域間の交流があって、「何かしようぜ!」みたいな雰囲気で、原料確保とか販売店をどうしようとかの話をすることもあるんですけど…。
それと、和紙が好きな人って、あくまで「和紙が好き」なわけで、「どこどこの和紙が好き」っていう人って滅多にいないですよ。(笑)越前和紙が好きな人も…、
タキペ
和紙好きなだけですからね(笑)
ハタノ和紙という大まかなところで好きで、そのきっかけで例えば僕のところに注文してこられて、雁皮紙みたいな紙を漉いてくれっ!てなると製法上の問題で漉けない。で、それをそのままお客さんに伝えたとしたら、お客さんにとっては「はい、さようなら」という感じで、そこで絶たれてしまうわけですよ。内装の紙を漉いてくれっ!て、例えば僕が東京で聞かれた時に、自分が京都に住んでいる事情を考えるとちょっとやれないとなる。そんならその人は「手漉き和紙で内装は無理なのかー…」というようになって機械漉きのものにしようかなと思ったり。それって職人さんを振り分ければ作れるチャンスなのに、それで終わってしまうやないですか。それってやっぱり、もったいないですよ。せっかく漉くことができる人は全国にいるのに。どこどこの誰々のところに行けば、こんな紙があると。これでやってくれたらできますよというネットワークがないといけないと思うんですよね。
タキペ
情報の交通整理がないということなんですね。
ハタノそれをやっぱり年配の人に任せても(笑)電話でやり取りしたり…、FAXすら使わない世代ですからね。電話しても物忘れしていたり(笑)その点、我々の世代はインターネットでやり取りしながらネットワークを作れると思うんですよね。
例えば原料がこれだけ余っているけど誰か使ってくれへん?とかね。そういうのが連絡で来たりしてね。やっぱり紙漉きは貧乏やからね。
タキペ生活はどうしても厳しいと。
ハタノ生活は厳しいですよね。基本的に産地でやっているところって、アレやないですか。例えば組合の経営が危なかったらお客さんからお金を集める方法を考えるのが商売やないですか。だけど、そうじゃない部分が多くて、逆に組合員である職人さんにシワ寄せが来るっていう…。ずーっと搾取されている。○○協同組合と○○農家の関係のようにね。だから後継者がいないんですね。その流れ自体を何とかしないと。例えば市兵衛さんの紙が高いなと言っているところに、僕がお客さんに言われたときに「あれは、ああやって作っているから高いのは当然ですよ」と。僕の紙が高いと。どこどこの紙より高いと言われた時に「あれは、ああやって作っているから高いのは当然ですよ」と言えるみたいな。それ、凄く奇麗ごとの世界のようなんだけれども、そういうものがあれば割と原料確保もしやすくなるし、原料屋さんにも応えることもできると思うんですよね。

サンドイッチ?!

ハタノ話は変わりますけれど、越前でも補助事業って多いんですか?僕らも補助事業を何かやって行きたいと思っているんですけれど。みんな財布を叩いてもどっからもお金はでぇへんし、お客さんからお金貰ったらって、そういう商品作るけどそれすらみんなできない状況になってるし…。
タキペ
あることはありますけど、他の業種の人たちとの取り合いになったりしている部分もあってなかなか。市からの補助金とかそういったもので言うと、イベントなんかをやることで出しやすくなるというのはあるのでしょうね。それが今、やっていらっしゃる手作り市。三土市(サンドイチ)なんかなんですか?
※2010年4月17日より1年間!毎月第三土曜日に開催されている綾部の田舎・志賀郷での手作り市。ハタノワタルさんもスタッフとして参加されています。

ハタノ三土市は全くボランティアです。スポンサー集めて。代表をやっている人が凄い魅力ある人やから、みんながお金出してくれてそれで運営して。和紙とは全然関係ないんですけれど。
タキペ
あれはなかなか魅力的だなぁと感心してます。
ハタノあれのヴィジュアルを全部やらしてもうてるんです。中身のチラシとか会場の見せ方とか。それが忙しすぎて。ボランティアでしょ。楽しいからやっているんですけれどね。地元自体を盛り上げようと思ったら、お客さんとの接点の一番最初の印刷物にこだわる。そこに意識を集中しなくちゃ絶対いけないんですよ。黒谷和紙、他の田舎の人たちと関わっていても、僕らこんなこともできるんだと喜んでいるんですよ。頑張ろうって。だけど頑張ったってお客さんは来んよって。だってお客さんに届いていないもん、て。だからちゃんと届けやすいものを作るっていうのが一番大切ていうか。
タキペ
全国的に見てもあれだけ地元を盛り立てようと、若い30代ぐらいの人たちがやっているのってあんまり聞かないですよね。
ハタノそうですね。トップの人がやっぱりしっかりしているから。トップの人は米農家の人ですよ。その人は、基本的には自分たちで作ったもんに自分たちで値段付けて売って何が悪いって感覚で。自主流通の米でどんどん売っていっとった人なんで。そういった発想の下やっているから。
タキペ
Youtubeでも出ていましたけれどハタノさんを取材されていた方ですよね?
ハタノそうそう。
タキペ
メチャメチャ、喋り上手いですよね(笑)
ハタノメチャメチャ、喋り上手い(笑)農家なのに(笑)
タキペ
もうほとんど噺家ですものね(笑)
ハタノおもろいですよ。
タキペ
トラクターに子供たちを乗せてやっているのなんか凄い楽しいだろうなぁと思いますね。
ハタノチケット代で50円ですけどね。そのチケットは僕の和紙なんですよ。そういう細やかな気遣いがありますよね。そういう実験、実験というほど大きくはないけど。遊びですかね。
例えばああいうことをやっていると遊びの幅が増えてきて。志賀郷、和紙に関係なくて、だいたい主にお百姓さん、若いお百姓さんなんですけれど。遊びの幅が増えて次から次へと広がっていっているみたいな感じやし。みんな何かボチボチ元気になってきている。交流ができて。
タキペ
横の繋がりを地元の中で作っていくというのが一番大切なんでしょうね。
ハタノそうですね。横の繋がりない限り、この仕事は成り立ってないですからね。