おしらせ

2020/09/24 17:35

染織工房 バナナネシア


福島泰宏 さん・福島律子 さん
ふくしまやすひろ   ふくしまりつこ

沖縄県国頭郡今帰仁村謝名697‐3

芭蕉布の原料栽培から織り、染めまで全工程を自ら手がける「染織工房バナナネシア」さん。ご主人の福島泰宏さんは糸芭蕉の栽培と芭蕉布の製作、奥様の律子さんは紅型(びんがた)染をされています。
そんなお2人が手がけているのが「100%芭蕉紙」。2011年10月下旬、お2人の工房に弊社の元スタッフ、伊藤がお邪魔し芭蕉、沖縄、伝統工芸など多岐にわたるお話を伺った、とても力のこもった取材記事の再掲載、その2です。

沖縄の伝統工芸 ~分野を超えて~



律子瀧さんのHPみてて、皆さんキレイな所でお仕事されてるねって、言ってたんですよ。他県の職人さんもきれいな工房で仕事されてて。
伊藤そうですか!?そういえば、使用していない漉き場を他県から来た若い人に提供して、シェアしている和紙産地もあるみたいですよ。
律子新しいやりかたですね。すごくいい!大宜味村の喜如嘉(芭蕉布の産地)も後継者育成という事で大きな場所を提供して教えてはいるんですけど、いかんせん、そこから独立というのが難しくて。もう何十年も後継者育成事業はされているけど数えるくらいしか独立されてないんですよ。県外でも芭蕉布は認知度は高くて、県外出身者がやっているケースが多い。
 
バナナネシアさんの芭蕉畑。夕暮れ時の畑は幻想的。
伊藤芭蕉布といえば、女性が副収入を得る為に携わることが多かったと思うのですが。今は事情が違うのでしょうか?
泰宏最近は従事者が大分減ってきていますから。
律子今まで糸紡ぎを高齢者に頼っているところがあったので、限界がありますよね。
以前ならお年寄りが一人暮らしをしていても、糸紡ぎに友達同士が集まって、収入があって、という事で作業場に集まってきたけれど、最近はデイケア施設で仲間に会う方が多いらしくて。今までの糸紡ぎの形も崩れちゃって大変だと思います。
伊藤難しいところですね…しかし、紅型染めもそうですが、県外出身者が地方の伝統工芸に従事するケースも増えているようですしね。越前和紙でも県外から来られる若い人もいらっしゃって、自治体が安く住宅を提供できるように援助したりしています。
律子いいですね!でも若い時期は、そこから所帯を持つというところが課題ですよね。
伊藤紅型の職人さんも、なかなか生活も厳しいとは聞いています。
律子沖縄の伝統工芸はみんなこんな感じ。時間がかかる。顔料を作るのも時間がかかるからね。機材もミルがある人はいいけど、そうじゃない人は人力だから、大変よ。
泰宏私たちの場合、たまたま織物以外の分野の人が「外に出した方がいいよ」ってアドバイスしてくれたんですが、芭蕉紙もそうなんですよね。
「沖縄の紙を考える会」というのがあって、その時は有名企業が補助金を出してくれて、展示会とか冊子を作って、僕らは紙専門じゃないけどこういう所に紹介してくれたりして。
伊藤人の目に触れるには、積極的に出していかないと、ですね。
律子10年前に出し始めて、やっと瀧さんまで辿り着いた、みたいなね(笑)
伊藤おかげでお2人にお会いすることもできましたし、沖縄まで来させていただけました(笑)
 
取材の際、偶然見かけた琉球の伝統舞踊「四つ竹」。衣装には紅型の模様が施されている。

夫婦間の許容範囲が広い

お2人の工房。沖縄の一般的な民家を利用されています。
  
泰宏今は丁度、バランス的にはいいんですよ。ボクは芭蕉布と紙の原料栽培、そして紙を漉く仕事で、(律子さんは)そこから先の仕事をするので、お互い領域が違う。だからお互いにけなす事もほとんどないですよね。「これはちょっとね」というのはあるんですが、ダメ出しは一切ないので。
律子参考のために「どうしたらいい」とかね。
泰宏だから夫婦でやっていても許容範囲が広いと思う(笑)
伊藤素敵ですね。そういうご夫婦に憧れます!
泰宏ちょうど自分たちもこれからどうなるかわからないです。もしかしたら紙の方のウェイトが大きくなるかもしれないし。
律子この人はその事で頭が一杯なんです。
伊藤沖縄移住のきっかけも「芭蕉布ありき」ではなかったので、シフトチェンジもできるんでしょうか?
律子(泰宏さんは)芭蕉布は自分の技を磨いて「より良いものを」と精進してきているけれど、本来は琉球、そしてもっと南に興味がある人なんです。興味がある関係の仕事だったらすんなり躊躇無くそっちに行ける。イヤな仕事をしているわけではないので、それはできるはず。
伊藤奥様はご主人がそうやって進んでいくことを応援してあげたいなという感じですね。
律子そこのところでは何もないんだけど、日々の生活のやりくりは長い課題ではありますね。
泰宏工房も古くなったしね(笑)
素敵な笑顔をパチリ。芭蕉畑には蚊が・・・泰宏さん、蚊に食われたかな? 

編集後記

初めてお会いしたにも関わらず、昔からの知り合いのように温かく迎えてくださったお2人。

  

「穏やかで飾らないお人柄ながらも、常に情熱を持ち続けていらっしゃる」

という事をお2人に強く感じました。

  

泰宏さんは沖縄の風土や文化に愛着を持った上で、ご自身の理念のもと力強く歩まれています。

 

その証明の1つが「一粒の種」から3年以上もの時間をかけ、「大人の背丈以上まで成長した糸芭蕉の木々」だと思うのです。

  

「使用できない部分も捨てられない」という想いから始まった手探り状態の芭蕉紙製作も、

今ではもう大きな柱になりつつあるようです。

 

そんなご主人の芭蕉紙に優しく紅型を挿す律子さん。

紅型のデザインも女性らしい可憐なものから、日常を写したユニークなものまで、どれもキュートなものばかり。

 

作品のイメージ通り温かくて可愛らしい女性ですが、守るべきものはしっかり守る芯の通った方です。

 

このお2人の紡ぎだす作品、もっと沢山の方に味わっていただけたらと思うのです。

   

きっと色を纏った繊維たちが活き活きと、まるで踊っているかのように見えるはずです。

泰宏さんとちゃっかり記念撮影!