100%芭蕉紙~糸芭蕉のいのちを全て生かしたい~ 3/5

 染織工房 バナナネシア

 福島泰宏 さん・福島律子 さん
 ふくしまやすひろ   ふくしまりつこ

 住所 : 沖縄県中頭郡読谷村

 HP : 染織工房 バナナネシア

 Youtube : 沖縄:芭蕉紙 バナナネシア

芭蕉布の原料栽培から織り、染めまで全工程を自ら手がける「染織工房バナナネシア」さん。
ご主人の福島泰宏さんは糸芭蕉の栽培と芭蕉布の製作、奥様の律子さんは紅型(びんがた)染をされています。
そんなお2人が10年前から新たに手がけているのが「100%芭蕉紙」。
2011年10月下旬、お2人の工房にお邪魔し芭蕉、沖縄、伝統工芸など多岐にわたるお話を伺ってきました。

芭蕉のいのちを無駄にしない~非木材の紙~

     芭蕉布、芭蕉紙の原料となる糸芭蕉の木。葉は食用バナナのそれより小さい。

伊藤 芭蕉紙を作るきっかけは?
泰宏 芭蕉布を作る工程の「苧剥ぎ(うーはぎ)」「苧引き(うーむぎ)」の中で、布には使わない繊維部分が残るんですが、それを原料として何かできないかと考えました。元々沖縄には芭蕉紙の伝統があったんですが、自分たちは紙漉きは手探りで始めたのでごく紙づくりはごく原始的ですね。でも、それがいいと言ってくださる方もいらっしゃいます。芭蕉100%の紙はウチだけじゃないかな、自分のところで糸芭蕉を栽培してますからね。  
※ここをクリックすると芭蕉布の製作過程がご覧いただけます。
律子 芭蕉は非木材ですから、この亜熱帯地域で木を伐採せずに紙ができるというのはエコですよ(笑)
伊藤 確かにエコですね!!ところで「ねり」(※1)は何を使用されているんですか?
律子 ハイビスカスです。
伊藤 ハイビスカス!?
律子 はい(笑)色々試してみたんですけど、ハイビスカスの葉と木の皮の「ぬめり」を使ってるんです。古い文献にもあるんですよ。

 バナナネシアの紙漉きには欠かせないハイビスカス。 

伊藤 すごい!島にあるものだけで作られているという所も素晴らしいですよね。
律子 ありがとうございます。原料はもう手近なものでやってますから(笑)
伊藤 紙漉きの道具はどうやって入手されたんですか?
律子 漉き桁は和紙漉きの現場で撮影した写真を大工さんに見せて、こんな風に作ってってお願いして作ってもらったんですよ。
伊藤 和紙でつかう「ねり」はトロロアオイなのですが、夏の暑い時期は粘性が長時間持ちません。こちらはいかがですか?
律子 夏場だと半日でねりが弱くなって原料が沈殿し始めます。沈殿するというか流れてしまうので、溜め漉きだと残らないんです。最初はどうして「ねり」が必要なのか分からなかった程なんですけど、身をもって分かってきた訳です(笑)
伊藤 本当にゼロからのスタートだったんですね。
泰宏 こういう風に紙を出すようになってから、県内の工芸品店の方からもほしいと言っていただけるんです。でも量産できるものではないので、やむを得ずお断りすることもあります。オーナーの熱意も伝わるんですよ、「すぐにでも頂戴」っていうね。在庫を沢山持ってたら出すのも惜しまないんだけど、いかんせん沢山できないものだからね。
律子 でも、お店から「あと○枚しかないから次またお願いします」と言われるとほっとしますね。オーナーさんが「これが好き」って言ってくれると安心して託せるんです。自分も腕が上がってきているし、紙も上等(沖縄の言葉で良いということ)になってきているので、作って、置いてもらって、売れて、というルートで行くのが理想かなって思って。だから、やっぱり「買ってよかった」と思ってもらえるものを作らないといけないと思って。これ使えないという物は少なくしていかないといけないと思ってます。
伊藤 工程的にも、紅型に時間がかかるんですね。
律子 紅型って、どの段階でもバッチリとなればいいんですけど、最後の水元が終わるまでは、どうかなぁという不安もあるんでね。

名刺サイズの芭蕉紙を漉く。余分な水分を圧搾しているところ。 

泰宏 こういうので紙を売り出したのもここ1年くらい前からなんですよ。それまでは、自信がないというより、紙漉き専門でやってる方がいらっしゃるから、その方達と対等に、というのが申し訳ないという感じで。でも、紙漉き専門の方の製品とはバッティングする事がないんですよ。
律子 もう見た感じが全然違うんです。うちの製品は「原始的な紙が好き」っていう方しか買わない紙なので(笑)。その辺りは洗練された紙とはまた違う。そういう意味では似ていないんです。
泰宏 首里で芭蕉紙を漉いている安慶名(※2)さんは、コツコツまじめな方でね。安慶名さんも奥さんが紅型挿していらっしゃるんです。安部榮四郎さん(※3)に師事して、沖縄の和紙を復活させた勝さん(※4)という方がいらっしゃったんですが、その奥さんも安慶名さんの紙に紅型を挿しているんですよ。私達と同じハガキサイズで安慶名さんの紙に挿しているけれど、金額が全然違うんですよね(笑)
律子 雰囲気が全然違うんだよね。古典柄で。
泰宏 落ち着きは全然違うね。芭蕉紙に紅型を挿しているのはこのお2人とウチの3名だけだと思いますよ。

シーサー柄の型置きを施した芭蕉紙。キュート!

※1 「ねり」とは紙漉きに欠かせない粘剤。紙を漉く際、原料繊維を水中にむらなく分散させる作用がある。
※2 安慶名清(あげなきよし)氏。那覇市首里の「蕉紙菴」において故勝公彦氏の技を受け継ぎ、芭蕉紙・琉球紙の魅力を伝え続けている。
※3 安部榮四郎(あべえいしろう)氏。出雲和紙の人間国宝。明治時代に途絶えていた琉球紙再興に尽力した。
※4 勝公彦(かつただひこ)氏。神奈川県出身。沖縄に移住し芭蕉紙の復元に取り組んだ。1987年、40歳の若さで急逝。

スタッフ伊藤の”はいたーい、沖縄!” 3/4

スタッフ伊藤が「バナナネシアさん」に辿り着くまでのきっかけ(?)を書いてみようと思います。 

延々続く急勾配の金城の石畳。
500年経つ今もバリバリ現役の生活道路。

人生何が起きるやら。

福井生還から1年半後、「仕事絡みではもう二度と行きたくない」はずの沖縄への長期出張命令が再び下りました。

 

しかしこの出張は、帰省手当も出張手当も付いてくる夢のような出張でした。

仕事でも極端な我慢を強いられることはなく、羽が生えたようにフリーダムな生活!

 

 フーチャンプルー と ナーベラー(へちま)の味噌炒め。奥にチラ見してるのはアーサー(あおさ)のてんぷら。どれもビールに合って美味なのです!

いただいたお手当で、 自分の好きな工芸品を少しずつ買い集める中で、紅型との印象的なも出会いもありました。

花で円が描かれているその紅型は、小さな額入りで、不思議な事に「いつまでも見ていたいな」と感じる出会いでした。

もちろんこの作品も購入し、今でも自宅に飾ってあります。

 

 スージグワー≒沖縄の「路地」。
人が一人通れる程度の細さに心細くなりつつも、
その先に何があるかワクワクするのです。

沖縄を満喫し「帰るのが惜しい」とさえ思ったこの出張は7ヶ月で終わり。

その後福井に戻りお仕事をしていた私ですが、腰痛の悪化で、静養とリハビリを強いられる事に。

体力はめっきり落ちました。

 

数ヶ月のリハビリの甲斐あって、歩くことにも自信が出てきた頃、ふと「沖縄に行ってみようか」と思いつきます。

なぜか次第に「今行かなきゃダメだ!」という気持ちに変化し、体力を確かめつつの一人旅へ出発したのです。

(続く)

 


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