紙が好きで~毎日が紙日和~

紙漉職人&紙雑貨『紙日和』作家

東野 早奈絵 さん
とうの さなえ

e-mail : kamibiyorisana@yahoo.co.jp
ブログ : まいにちが、紙びより

“紙漉き職人”として和紙製造会社に勤める傍ら、越前和紙を使った手作り雑貨ブランド『紙日和(かみびより)』を立ち上げ、企画、製作、時には販売まで一人でこなす東野早奈絵さん。

東野さんの作品は民芸調の和紙雑貨が並ぶ地元のお土産屋さんの店頭でひときわ目立っていて、でも、どこか“ほっ”とするとても柔らかな印象です。

その魅力に迫ろうと、2011年3月に東野さんのご自宅兼、工房にお邪魔してお話を伺いました。

 

とにかく紙が好き

「ずばり、紙が好きな理由は?」と尋ねるてみました。

「そうですね…お絵かきしたり文字を書いたりと、小さな頃から紙を使っていますから、理由すらないような。」
唐突な質問に、少し困ったような表情をされた後、次のように続けてくださいました。

「本当に身近にあって親しんでいたんですよね。
でも、改めて考えてみると、折る、曲げる、柔軟にしなる、ちぎって再生する、など変幻自在なところが好きかな。
そして、風合い。柔らかさやぬくもりが感じられるところも好きです。」

その言葉は、思いをのせた芯のある口調になっていました。

ここで、あるエピソードを教えてくださいました。

福井に来てまだ間もない頃、若手職人でグループ展を催すチャンスに恵まれたそうです。

準備のため、休日に紙漉きをしていた時のこと。
「生まれたての紙を玉にして貼り付けてみたんですね。そうしたら、乾燥後に和紙が“ピン”と張って。その感じがすごくいいなぁって」

笑顔で語ってくれる表情から、その時の感動が伝わってきます。

「仕事だと決まった紙しか作れませんが、自分の意思で自由に作れるぞっていう事で、嬉しくてしょうがなかったですね。」

紙が大好きで、紙と真剣に戯れるうちに見つけた偶然と感動、そんな風に感じます。

この和紙の玉から発想を得て、初期の作品“ころころストラップ”が完成したのだそうです。

このストラップには、耐久性を考えて、表面に防水剤を施しました。
アクセサリー類は手に触れる機会が多く、どうしても使い始めてすぐに不要な毛羽立ちが起きてしまうからです。

結果として、表面は和紙本来のそれとは違い“つるん”とした感触になります。

「紙の素(す)に近い、柔らかな表情を使ったモノを作りたい」
ストラップでの経験があったからこそ、この思いも強く出てきたのでしょう。

「柔らかさや風合いを出すには、もっと毛羽感を出したい」

そのため

「置物なら糊の量を最小限にとどめられるから、毛羽感も出せる」

と考え、ペーパーウェイトの製作に至ったそうです。

実際、ペーパーウェイトは和紙の毛羽立つ風合いで動物の毛並が表現されており、動物達の特徴をとらえた温もりある作品になっています。

★ ここだけの話 パート3 ★

私達のささいな質問にも真摯に、丁寧に答えてくださる東野さん。
せっかく伺ったお話を私たちだけで独占するのはもったいないので、東野さんとの会話の一部をお披露目させていただきます。

ここまでお話を聞いていて、東野さんて思ったことをダイレクトに行動に移していらっしゃるなぁ、と思ったんですが…
東野 ええっ、そうですか?
先生を辞めて、東京に出て雑貨屋さんの店長さんにまでなったら、もうそれくらいでいいかな、って落ち着いたりすると思うんですけど、そこからまた何も知らない福井に行くっていのは凄いなと思うんです。ご自分でそういう風に思ったりしますか?
東野 うーん、そんなつもりはないんですけど。
“ただ幸せに向かっているだけ”なのかもしれません。
大胆なことをしてるつもりもないんですが、後で行動力がどうのって言われたときに「えっ」て思ったことがあります。
“がんばって勇気を奮い起こして”というより、“次に見つけた好奇心に向けて自然と気持ちも準備し始めている”っていう感じに近いと思います。
だから、あまり美しい旅立ちはしていないですよ。
私もまだ考えが甘いのかもしれませんが、好きな事を仕事にするっていう風にいたいんですよね…
教師を辞めた時、お父様には相当反対されたとの事ですが、今はお父様と連絡されていますか?
東野 東京の5年間を経て、今は少し理解してくれています。
父は昔から子供たちが公務員になる事を望んでいたんです。
親の期待に応えようという思い、あこがれていた姉が教員になったということも、教員の道を選んだ理由の一つかもしれません。
美術系のことは好きだけど、その道で生計を立てるのは親が許さないと思っていたから、趣味の範囲でいようと考えていました。
だから、自分のやりたいことに目覚める時期が遅かったかもしれませんね。
伊藤 目覚めが遅いとおっしゃってますが、今、すでにその道を歩いていらっしゃいますし、実際にご自身の作品を発表して、色んな人の目に留まってますよ。
なんといっても、私たちは東野さんのファンですから!これからも応援します!
東野 ありがとうございます(笑)
  (次のページでは“夢”について伺っています)

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