紙が好きで~毎日が紙日和~

紙漉職人&紙雑貨『紙日和』作家

東野 早奈絵 さん
とうの さなえ

e-mail : kamibiyorisana@yahoo.co.jp
ブログ : まいにちが、紙びより

“紙漉き職人”として和紙製造会社に勤める傍ら、越前和紙を使った手作り雑貨ブランド『紙日和(かみびより)』を立ち上げ、企画、製作、時には販売まで一人でこなす東野早奈絵さん。

東野さんの作品は民芸調の和紙雑貨が並ぶ地元のお土産屋さんの店頭でひときわ目立っていて、でも、どこか“ほっ”とするとても柔らかな印象です。

その魅力に迫ろうと、2011年3月に東野さんのご自宅兼、工房にお邪魔してお話を伺いました。
 

自分の手でモノ作りしたいという目覚めから

東野さんは和紙職人の傍ら、紙を使って自らデザインしたオリジナルの雑貨を製作しています。

アクセサリー、レターセット、ペーパーウェイトなど、その種類は多岐にわたり、パッケージにもこだわりが感じられます。

「ほんとに全部一人でやってるの!?」と驚くぐらい素敵で丁寧な仕上がりです。

そもそも北海道で生まれ育った東野さんが、遠く離れた福井県にやってきたのはどうしてなのか。

北海道の大学を卒業後、教師の道へ進みます。
理科と美術の教員免許を取得していたため、理科をメインで教えつつ、サブで美術の受け持ちます。

しかし、教師になって6年目。 

「マニュアルに沿って教えるより、自分からものづくりなどの発信をしたい」

という思いが徐々に強くなります。
「大学時代、手作り作品を模擬店に出しだんですが、そこでお客さんに手に取ってもらえた嬉しさが、モノづくりの楽しさに目覚めたきっかけだったのかもしれません。」

恐らく、周りの人達には順調に見える生活だったと思われますが、東野さんは動きます。 

「教師という安定を手放して次に進む不安より、教師を辞める事のほうが大きい事だった」ため、その勢いがそのままエネルギーとなり、単身上京。

そして、関東に30店舗ほど展開している雑貨店にアルバイト入社し、1年後には店長を務めるまでになりました。

その傍ら、雑貨のトータルプロデュースを学びます。しかし、深く学ぶにつれ、ある事に違和感を覚えるようになります。

雑貨の多くはコンピュータソフトによってデザインされ、海外で製造されるのですが、その事に疑問を感じ、そして大事な事に気づきました。

「私は自分の手でモノを作りたいんだ!」

この気づきをきっかけに“伝統工芸”に惹かれるようになり、中でも幼い頃から身近で親しんでいた“紙”にベクトルが定まります。

「最初は全国の和紙産地を巡り、自分が一番合うところで、和紙も自分の好きな産地を探そうと考えていました。

どこから回ろうかなと思い、和紙のガイドブックをパラパラ見ていたら、偶然“越前和紙”の美しい写真が目に入ってきたんです。」

その「生成りの和紙」の写真が美しく目に映り、早速福井県の和紙の里を訪問します。

その時、一人の紙漉きの伝統工芸士に出会い、東京に戻った東野さんに親身に和紙の仕事に関する情報を提供してくだったそうです。

東京から和紙漉きの職業体験に参加する機会にも恵まれ、ついには和紙の里にある和紙製造会社に就職、現在に至ります。

★ ここだけの話 パート2 ★

私達のささいな質問にも真摯に、丁寧に答えてくださる東野さん。
せっかく伺ったお話を私たちだけで独占するのはもったいないので、東野さんとの会話の一部をお披露目させていただきます。

和紙の産地は、福井のほかにも美濃や埼玉、北海道に近い東北にもありますよね。そういった中でなぜ福井を選ばれたのですか?
東野 東京にいた頃、全国の産地を巡ろうと思っていました。自分が一番合うところで、和紙も自分の好きな所を選ぼうって。
さて、どこから廻ろうかなと思い、和紙のガイドブックをパラパラ見ていたら、越前和紙の写真の挿絵がきれいだったんです。
今は勘違いって分かるんですけど、その時は、東京から一番近いのはこの辺りかなって思ってしまったのがきっかけですね(笑)
いやいや、全然東京から離れてますよね(笑)
東野 当時は土地勘もなかったので(笑)
初めて福井に来たのは5年前の秋です。“卯立の工芸館”で紙漉きをされていた伝統工芸士さんがめちゃめちゃ優しくて人懐っこいおじさんで、「あんたどこから来たんや、自転車貸してあげるから大瀧神社やら、東山魁夷の展示会、見ておいで」って言ってくれて。
それで「今仕事探してるんですけど、仕事の口ありますかね」って聞いたら「おんちゃん、探してあげるわ。あんた、手漉きがやりたいんやな」っておっしゃってくれて。
東京に戻ってからしばらくは“こういうお仕事はなかなか求人がないだろうから、しばらく待たなきゃだめかな”と悶々としていました。
そこへ伝統工芸士のおじさんから、求人募集の連絡をお電話いただいたんです。
こうしてできたご縁はすぐに掴まないとチャンスを逃すぞって思って動きました。
急展開でしたね。秋に訪れてから、4月にはもう今の会社にお勤めしていましたから。
今の会社にはすぐ決まったんですか?
東野 いくつか求人のお話を伺っていたんですが、今の会社は和紙を1枚づつ丁寧に漉いていてるというイメージがあったので希望しました。それに、楮も三椏での紙漉きもやるって聞いていたので、勉強になると思ったんです。
  (次のページでは、紙への思い、東野さんを動かす原動力について伺います)

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